ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔192〕その頃のキャロルにはいつまさお君との関係を反故にしてもいいんだ・・・というような安直はありません。自分の基本路線がわかっていたこともあって、自分の人生は人のサポートをしながらそれに応じた動きを選びながら開かれていくという観念的誘導路にあって周辺はそこを知ってなおかつ、まるでオデキに触るように接していたのです。この性情は少し厄介なものでアマノジャクに似ていました。注意すれば逆にマイナスの結果が出てしまうのです。人の意見の付け入る素地のない性情がもたらす難儀はくみされない性質を強固にしていて、周囲はどんどん変わり行く時間背景を見定めつつ、娘の取り込みにかかっていたのです。母は柔和な観測をしていてそれは家出の期間に培ったものでした。居所がわからないという最悪を経験した関係で、それがないならすべていい・・・という立場にいて、父はまだしぶとく理想を追っていたのです。でも口を滑らせてはいけません。差別的な言い方ではまた娘が離れてしまう・・・それを避けながら相手を上手く別誘導したい父の思いは格別で、そこと対峙するときキャロルは苦手な気分に押し倒されそうになっていた。芸術分野に迎合は存在しないのです。