ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔191〕父は休みの日によく図書室の仕事に出掛けていて、それが父にとっての息抜きになっていることを日頃から悟っていたキャロルはその日、買って出ます。桜馬場中学校へいく朝です。その日はどういうわけか本に囲まれて過ごしたい気分だったのです。いつも父が出掛ける日曜日、ついて行こう!!とまでならないのに特別な勘が生じていたのも理由があったのです。父の仕事の明細を知りたかったのです。司書教諭の免状を早くに取って中学校の中の図書室で父は水を得た魚のようにちょこまか泳いでいたことを、暗に母は小馬鹿にしていて、中学校の教諭の出世はなんなの?と心のどこかで問い掛けていた節はあって、そんな母の面前でツイテイク!!を言い放つことは父孝行にも値するいいことであることを知っていたのです。不憫な父にも言い分はあるのだ・・・と、そして図書室へ行けばその概容がみずから立ち上がってくるぞ!!との狙いでいたのです。日差しの柔らかな図書室の一角に小さな場所をとってキャロルは父の安堵の表情を観察します。誰がそうせよ!!と言うまでもなく父は自分の日頃の醜態を話しません。父の威厳がまだあるとどこかで過信していたのです。キャロルは身を持って観念するのです。家庭の医学に相当する物語を自分は将来したためてやろう・・・と。