サファイア・マン《かけがいのない男編》〔133〕結婚はその時の勘が外れたからと自分からさっさとおさらばするのは難しく、一回目の結婚以上のプレッシャーを感じずにはいられなかったことは無知にも相当しました。自分の思惑は物の見事に外れ、後悔の念だけが突出しているのでは?俯き思考に陥ることは先手ではなくもっと別の展開軸も必要でした。若い三十一歳のキャロルはしかし・・・今以上に落ち込み易い性格を持合わせていて、今のような大胆不敵な性情は、五十歳を超えてから培ったように思えるのです。毎日毎日お金の工面ばかりに精神を費やし、どうすれば生活費を得ることが可能になるか、そういった切羽詰った中で、作品をもしも生み出すことが可能なら、どんな作品になるのだろう・・・と。何回か別居も考え、実家に帰ることも視野に置きますが、それも随分な話だろうと自分の手元不如意を嘆きます。彼を是正出来ないのなら、出来る範囲で毎日を有意義に暮らすことが将来を確実にいい方向へ導くのでは?しかし現実には、この頃のキャロルはかなり荒れた心をどこにぶつけるでもなく家の中で悶々としていたことは認めるし、悩める家庭人として突破口がないことが口惜しかったのです。自分を見下す相手が、しかし、家の中にいたことがチャンスだったのでは?闘う余地も方策もすでに明白では??!!と思えてきたのです。