ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔177〕タクシーの運転手さんは気配りがあって全然訊こうとはしてきません。何か深い事情があるのだろう・・・そういった気持ちがこちらへ波のように打ち寄せます。キャロルも自分の思いや構想がガタガタに崩れ去る憔悴はあっても母に会えることが自分の大きな希望として立脚してくる。なんていう親不幸?と嘆きます。そういうことをなし崩しにさせたのもまさお君へ恋慕が大きかったからで、まだその時点ではいずれまた彼の元に戻ろうと強く思っていたし、帰ってきたキャロルを三日間は静かにしてくれていた家族でしたがやはり父からこう提案があるのです。山崎さんというツテがあって良かったら書店で働いてみないか?いつでも受け入れるって話をつけているって。それは意外な設問で、働くイクオール、キャロルにとってはお金を得ることではないそれまでだったのでいい機会かもしれない・・・と。中学二年で書店のアルバイトは経験していました。それを考えれば、自分を訓練するいい場所かもしれない・・・と。父は私が頼まないのにある条件を突きつけていました。1977年の一月十五日になったら君を開放する。家から出て好きな道を歩んでもいい。しかしそれまでは二十歳まではこの家で修業して欲しい。母も同感という顔でこっちを見ています。キャロルは承諾します。弟も嬉しそうでした。