サファイア・マン《緻密な男編》〔116〕結婚生活を三食昼寝付きには捉えてはいなかったものの、どこかで、安堵感を求めていた自分の図々しさ、そして夫の地位に甘んじて楽をしてもいいじゃないか?っていう依存心。そういったものが序盤で全部撤廃されて、ヌクヌク感が皆無だったことが吉と出たのかもしれません。当時はわからない彼の拘りも見えてきます。独身で二十余年勤務し、彼は彼なりの成果をバンカーとして求めていたにちがいなく、お決まりの成功の絵柄は銀行内でしばしば語られていて家庭を持って初めて人間として認められるというものだった。彼は、その点に疑問を抱き、出世の法則にも蹴りを付けたいと考えていたのではないのか?今だからわかってきたこの結婚成就型の古い体制と出世法ですが彼の中で、ギモンフが芽生えていたのも当然だったかもしれません。いい仕事を率先してやり、成果を出し、そして誰よりもそれがスピード感あるものなら実際にはそれが出世の材料になるべきで、やはりどこかで、バンク行政が間違っていく起点にもなったのでしょう。灰色路線のバンク独特の色合いを彼なりに感じていたのもいい兆候だったのかもしれない。結婚していれば支店長は間違いないのを、何度かスルーしてみて意地になっていたかもしれません。