ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔159〕頭は決して良くないけれど自分より優れた点がこの少年にはあって素直な一面。キャロルは人生での憂鬱を思います。あれほど四歳で起こした事件で懲りたはずなのになおもこの少年を傷つけたこと。泣いているように見えたし顔は紅潮していたのです。しかしキャロルにも意地があったのです。いつも優等生でかしこまっているばかりではない違った一面を皆に見せておく必要があったのです。お天婆であることは非常に重要だったのです。キャロルはその少年の素朴な点を買いました。自分にはない重要な一点だったのです。自分には計算高くて狡猾な一面があって勉学面に序序にあらわれて来始めていたのです。アバウトという外来語はまだ飛来してきていませんがキャロルが直感で動いていたのは事実で、先生の虫の居所をかなり刺激する生徒であったのも言えたでしょう。あるときこういう場面が訪れます。家の家族の生業を訊く授業です。お父さんやお母さんが従業する仕事の発表です。キャロルは教員と答えみんなの発表を観察します。その少年の番がやって来ます。事実知りたかったキャロがいたことも自明で、その少年は母は水商売ですと大きな声で答えるのです。騒然とする教室内、キャロは水商売を漁業だと思っていたのです。