ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔141〕ある時でした。キャロルに担任からお願いがなされます。具合の悪くなった生徒を自宅まで送り届けることで、その機会はキャロルに頻繁にあったのです。男の子のときもあり、このときは女の子。徒競走タイムでいつもキャロルよりも一秒遅い生徒で見るからにのんびりした生徒でした。しかし遠縁の生徒だったがゆえに親近感もあり、話しかけたりしながら田舎道を歩くのです。全然具合悪そうにはないのですが、早退が多くこの生徒がいつもビリなゆえ、自分のこころが堰き止められていることも一理あって尋ねるのです。早くなる為に一緒に運動場で練習せん?よか・・・よかというのは長崎弁では断るときで、キャロルはやっぱりと思います。タイムを速くしたい!と思う自分に反してそれには反応しない人もいるんだな?って。キャロルはなぜ、自分がみんなと同じように速くなりたいかを突き詰めようとします。人生で人並み以上であることはどこかで必要になるのでは?いや、学校での体育であってそこまで拘る必要はない?しかし自分が十秒台なのに他のみんなは九秒や八秒、お隣の少年に至っては七秒台。この秒台落差がキャロルを平静ではいられなくしていたのです。