人を動かす方法は大体、地位や金銭やお駄賃だ。地位を設定され提示されれば人間はこころに虹を描く生き者で、約束されればその招聘行為や声掛け自体がありがたく思えて素直に応じようかなとも思う。支店長時代俺は行員たちをランク付けしボーナスの金額も俺の思うがままだった。俺の評価に値するのは何も言わずに結果を出す寡黙なタイプで、今でも覚えているのは、口の達者な人間にロクなのはいなかった。寡黙・・・なんという美しいニッポン語だろうか・・・それでいて、他者に対してシカトや黙殺をせず生き生きと仕事に没頭する。俺はキャロルにその寡黙&結果という様相をこれまで見たことが無い。しかしあいつ、町費集金だけはやり遂げたようだ。なんのことはない、五百円のお駄賃を我が家の町費のブンと加えてあいつに千円渡した。ただそれだけのことだ。