サファイア・マン《緻密な男編》〔60〕父には微妙な性癖があって、こういうときはこの本とかすかさず紹介出来る達人だったのです。落ち込んだ時にはこの本だよ?とかスピーチを頼まれたときはこの本、どもりを直したいときはこの本、結婚するときには・・ええ?と思いません?それなら留年しそうになって、ほぼそれが決定的になる間際にも介助する本は必ずあるって。しかし父はそうはなってはいけない路線を高校教師と詰めて話し合っています。キャロルは自分の中にブシツケな傍観者がいることに気が付くのです。悩んで悩んで悩み抜いているはずの自分なのに?おっかしいなあ~って自分を本格的に見つめます。すると見えてくるものがあったんです。父は人生のフルコース、最も美味な部分を狙っているという算段で、それが崩れるから猛攻していた。しかしキャロルは傍観者になって作家の定位置を知ることになるのです。人生の岐路です。よしんばそこでオチコボレ烙印を押されたとする・・・一生を賭けてもそれを消すことは不可能なのか?っていう設問で面白いし味があるな?と変換キーを押すのです。悪循環の塊そのもので、努力の跡もさほど見られないと嘆く教師。彼らの志向はエリートになること。しかし作家なら?本分が違います。どんな生活レベルの人々であってもそれを描くのが仕事なのです。