サファイア・マン《面白い男編》〔54〕運命決定論的に論じれば、母はこの家に残るべきである自分の位置に気が付いていた、とそう結論が出来るでしょう。つまり、優先順位です。数々のゴタゴタはあってもこの娘を育む上で、あのアパートよりも東長崎の環境を優先するべきでは?なぜなら、あのアパートでほぼ孤立の状態だったからです。そして弟が生まれるということはこの地での環境の約束をこの娘に対して果たしたということ。確かに弟が欲しいのよ、妹でもいい、ひとりっこは寂しいの・・・。この見事な懇願に答えた形の今回の妊娠。何もかもがあの子の言う通りになっていくことが運命決定論の歯車としての役割をすでに与えられているかの錯覚?それもあったでしょう。キャロルが特別の少女ならその一部を知っている母親なら一体何を優先するべきか?その母の葛藤は赤児を産み落とすまで続行で、それが赤ちゃんが生まれてから彼女の力は絶大になっていくのをこの目で見るのです。いいえ、それはタヤや姑への威力ではなく人生での女性としての自信で、男子誕生はこうも女性にとって嬉しいものなのか?キャロルは少しジェラシーを感じたくらいで、母に病室で何度も確認したくらいなのです。男の子は女の子よりも素晴らしいの?黙って笑みを浮かべて頷くのです。