サファイア・マン《面白い男編》〔47〕父が市会議員に出たその四年前を思い出します。うぐいす嬢として懸命になって父を当選させたい!とそうは願ってはいても、肝心の父の政策を分析するまでには至っていなくて、それよりもキャロルの心を捉えたのは選挙参謀として父が雇った教え子のT氏でした。俊英ですぐに物事の懸念に気が付く頭脳明晰さが今も蘇ります。キャロルが赤ちゃんのときに父がクラス担任として関わった教え子でその頃は三十代の半ばを過ぎたくらいでしょうか。そのT氏のことを考えるとキャロルはいても立ってもいられなくなる程にこころがウキウキして、父の県会議員選挙を応援してもいい!とそう及んだのには、もしかしたらT氏がまた我が家を訪ねてきて、もう一度僕に選挙参謀をやらせて下さい!とそう言って来るのでは?そういった甘い期待があったのも事実。彼はお嬢さん♪とキャロルを呼んで選挙で惨敗しても次の大きな選挙に出る候補議員さんのうぐいす嬢のアルバイトをキャロルに紹介して来たりと親切だった。頭のいい男性にありがちなその溢れるばかりの知識のエゴイズムにキャロルは押し流されそうになりながら、一級のニッポン男子の生きざまについてを観察していたのです。T氏は父の選挙の後、キャロルにうぐいす嬢のアルバイトを紹介した後はもう姿を現すことはなかっただけに余計気に掛かる。お嬢さんの将来を考えると僕は・・・そういつも配慮をしてくれた言動が今だに新鮮で懐かしいのです。