ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔101〕トタンで作ったベランダが二階にはついていて、畳三畳くらいの広さですが別天地でした。落ちたら危ないのにしょっちゅうそこへ足を運んだのには訳がありました。亀の卵です。当時、冬だったと記憶します。そのトタンのベランダが崩れ落ちそうに雪が積もった日が長崎にあったのです。そこに亀のケースを置いていたのです。卵は孵化すれば赤ちゃんが生まれるはずでしたが、その要領がわかりません。卵は言葉が出せない分、殻の中ですったもんだを繰り返しているよう見えた。父は優しかった・・・海に〔東望の浜〕戻してあげたらいいって。キャロルもそれを取りました。卵をずっと自分の手元に置いていればいずれダメになりそうで怖かったというのもあり父は文系であるからなお、命に拘ったのか?それとも理系に縁のある父なら、見方や対処の仕方も別にあったのか?と考える機会を得ました。父はどうやら孵化させようよ!とは言ってこなかった分だけ文系ニンゲンなんだなという幼児の勘。それは後年まで尾を引きました。文系の人生は科学から逃避することで自分を立脚して久しい。すると理系にもよんどころない欠点が??キャロルの厳密な脳裏の戦いとは相反して、弟は卵の色や形に興味を持ったのでしょうか。それを触らせると、キャッキャ言って興奮しながら喜ぶんですね。