サファイア・マン《かけがえのない男編》〔41〕キャロルには運命の法則が生まれながら設定されているのでは?それを彷彿とさせる事件がここに勤める一年前に起こっていました。幼い頃、三年間ピアノを教えて頂いた小山先生のお嬢さんがうちを訪ねて来たのです。最初は気が付かず、部屋で自己紹介し合ってお互いに気が付く・・・。まさか、あの小山先生の娘さんと再会が・・・。なぜなら三歳から六歳とピアノを習いに行き、家の中に入っていても彼女と会うことは一回あったか無いか。しかもピアノのみの英才教育ではなくご自分の子女達にはヴァイオリンも取得させようとなさっていた。幼い気持ちに拍車を掛けたのは、ニッポンの母達の激走だったし、母もそれに乗り遅れまい!と躍起になってた。小山先生は静かな哲学者タイプでおっとりしていて上品でした。間違っても卓袱台返しなんか起こらない和風の小さな佇まい。そこで育てられた子女が丸善団地のテッペンにある大工の棟梁の棲むアパートにわざわざ・・・・。設計アシスタントとしてデザイナーについて来ていたんですね。キャロルはっきり言いますが、これは運命の法則のプロローグだと思いましたね~なぜなら、前夫、マエダンが元請として建築した仕事は後にも先にもこれだけだったとそう記憶するからです。小山先生の話で華が咲き、部屋中に情操の時間が流れ、キャロルは激しい羨望に包まれる自身を禁じえない。私が接する本来の人々はこういうハイカルチャーな人々だったのではないのか?という強烈な疑問。しかしなぜ神さまはキャロルが順路を間違ったとしても、こうして再会を??と。