ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔90〕矢上に引っ越して来たキャロルはみんなと交わりたいのに母は階下に棲む家族と断絶を強行して辛かった。しかしもしもこの母の行為や性癖が、いつか、ニッポン人の中に現れるとすれば?という示唆を頂戴していたのです。この絶対無視という強行がいつの日かほぼ尋常にニッポンで行われるなどとキャロルはまだ思ってもいません。ただ、母の想いがあまりに重たく群を抜いていたので子供なりにこれは・・・と勘付いたともとれます。シカトこそがこの国の雨戸・・・。外は晴れているのにそれに気が付かないのです。さっきも長崎新聞がトントンと扉を叩いてきます。新聞を取ってはもらえないでしょうか?いいえうちは結構ですよ、と断りました。紙面に書いてくれっていうならまだしも二部も新聞要らないでしょう。ニッポンの進路が将来どうなるか、この頃はまだイケイケドンドンですからキャロルもそんなに杞憂はしていません。母はチャッチャカチャッチャカと二階の台所製品を買い揃えていました。今の浜の町のモスバーガー付近にきのくにやという家庭用品の店があったのです。大きな堅い台紙に穴が一杯空いてて、それにフィックを掛けます。すると、沢山の台所用品が引っ掛けられる。当時とすればこれは大発明です。小フライパンやお玉やなんかがそれに引っ掛けれて、母の安堵の顔が伺えます。どうして、階下のみんなとしゃべってはいけないの?フンといった高慢な表情で母はキャロルを見ています。しゃべる必要がないからしゃべらないのよ?文句ある?キャロルはがっかりするのです。