サファイア・マン《緻密な男編》〔32〕古湯温泉へのパスポートがどうやら取得出来そうで、シゲコのお父様の33回忌の法要を六月にしたいとの連絡を甥っ子から貰ったようです。キャロル夢のようで古湯温泉もじっくり味わえる・・・。それに甥っ子さんは広島から固定電話で掛けて来てシゲコご満悦~いまどき固定電話なんてありえないし、まるで江戸時代みたいで感動した!っていうんです。確かに固定電話には希少価値ありますし、シゲコの甥っ子さん、とはいってももう重役目の前という年代かも?って。天下のキャロルを生産するマツダの社員さんと思うとドキドキ!!シゲコはキャロルに黙ってこのハナシを断ることも考えたというから諌めたのです。なんと二ヶ月くらい前に八歳上のお兄様から電話が来たときにも失礼なことを言ったそうでそれを聴き残念さ、ひとしおになったのです。俺が死んだときに長崎には来てくれって。そんなヘリクツはないとキャロルはシゲコを強く非難したのです。でもパートナーの表情や言動、行状こそじぶんの影響だろうと、その点を踏まえて一歩下がったのです。キャロルは物書きだから変幻自在を核に活動しますがシゲコは一般人です。そこが彼を迷子状態にしてしまっている。物書きには使命があるのです。誰も気が付いていなかったことを提示し大衆の目の前で立証し、定義付けをしなければならない。その過程において、庶民に理解を求めることがあるでしょうか?むろんありません。権力に対する迎合も皆無です。世界一孤独な仕事なのです。