サファイア・マン《緻密な男編》〔25〕昨日は昼過ぎ頃、弟を訪ね久しぶりに話します。長女がトルコ桔梗とカーネーションを携えて来てくれました。父のことを思ってくれている、それがじ~んときてキャロルも弟に訊いたのです。あのパンやさんには連絡してみた?って。いやあ、そういうことは、まださ。まだって、仕事は?そういう質問を予期していたのか、弟は、人のことはいいから、自分の心配せんね?と笑顔で言う。確かにその通りで、経済的にまだ余裕がある、そんな感じに見えました。健康そうでなによりです。家に帰ると、ローソンのオーナーから電話があります。お給料を取りに来てください!と。懐かしくて、嬉しくて、シゲコハイヤーに乗って駆けつけました。どんな毎日を過ごしていますか?ど、どんな毎日っていうか、今は大人しく家にいます。今のレストランジョイフルの研修で、採用にならないかもしれないので、本当のことを言うのを控えました。オーナーは、どういう訳か、西行の短歌を例にとるんです。貴女が引きこもりになっているのでは?と実は心配しています。ありがとうございます、いろいろとご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。するとオーナーは笑顔で、あなたは月に一回文芸春秋を読むことにしたらどうですか?と。それを僕はやっているんですが、世の中の動きがその一冊でわかるから凄いんです。わかりました、文芸春秋ですね?キャロルは一万九千円のお給料袋を封を開けず、シゲコに手渡しました。シゲコはキャロルの企画部長に四月から昇進しているんですね~