サファイア・マン《かけがえのない男編》〔12〕弟とホスピス病院を訪ねることはしませんでした。差額ベッド代です。弟の受け取る分がすり減ることは出来ない。むしろ、彼は報酬を受け取るべきだとそう思うのです。それは、弟が懸命におむつを替えて頑張っている姿を観ながら、方向転換しました。最初は父の年金は隈なく、父の為に使われるべきだ・・・とそう理性で強く思っていましたが、歯車が噛み合わないことに気が付いた。ホスピスの人々と精神的に対峙するよりは今の形に意味があるという結論なのです。なぜ?最初は父に安らかな最期をと願ったのに?自分の気持ちを分析するとキャロルに体裁や逃げがあったということです。正直な部分になるのですが・・・。弟の直葬案はどうしても無理があるのでは??という懐疑ですが、もう彼に任せることにしたのです。長女や旦那に罵倒されて一気に目が覚めました。彼女たちからすれば、弟とキャロルは落ちこぼれの同類項。どれだけ迷惑かければ気が済むの?弟のように貴女も、この家を売るに違いない!!って、二人から決定的な言葉を突き付けられて、哀しいかな目が覚めたのです。弟の心配や父の世話を焼くような身分ではない!という覚醒ですし一円も収入がない自分が尚更、彼の収入を減らさせることは出来ない。ましてや、彼は、逃げずに介護を頑張っている、奮闘している。その評価に立てば、二人にとって二度とは来ない時間を過ごしている。父にとっても弟にとっても忘れられない貴重な時間になるのだという真実なのです。