ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔66〕タヤは続けて、男の子を授かります。三年後に・・・。しかしこの輝彦を3歳のときに疫痢で亡くして疑心暗鬼になってしまうのです。おめでたい家になっていこうとしていた矢先。しかも戦争の色合いが段々濃くなっていく。自分があてにしていた夫の光男は財産的災難に見舞われます。なんと養子で入ったはずの和田家の跡取りを奪われてしまうのです。光男は染めやのぼりでは当代髄一とまでいわれ、えびすさんの旗はまだ、矢上の旧家のどこかに残っているのでは?と父である貞彦も言うので拝んでみたいな!という気持ちがキャロルにはあります。もう孫までの世代で恐らく終わりです。この容子の時代、キャロルの時代で、過去を伝えられないのなら、無理からく現実はのしかかってきます。語り部になってよ!?とこの間も病室の父を促したところです。お父さんの戦地での経験をもっと話して!ってキャロルは言うのです。不思議なことに父はあの駆逐艦槙で復員を果たしています。レイテの戦いに、あの江戸兵太郎少将の部隊でこの槙は参加しているのです。父が最初に母国の港としてニッポンに降り立ったのはなんと鹿児島だったのです。復員兵の髭は伸び放題・・・。それでも長崎広島はもうないのか??という焦りと早く、自分の眼でそれをその情報の真相を確かめたい気持ちで一杯であった。もしも沖縄ではなく、アメリカが先に台湾に侵攻していたら、恐らくキャロルもこの世に生まれてはいなかったでしょう。台湾では次のような情報を聞かされていたのです。長崎と広島の街はもう吹っ飛んでしまってないんだよ・・・と。