ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔63〕教師の提案で帰りの会の後には歌を歌って帰ることになります。一年を通じて、あの曲、ドヴォルザークの新世界からの、遠き山に日は落ちて~~その歌もキャロルは歌うまいと口をきゅっと結びますが、その日にいいことがあったりしたら、自然と口が開くし、その歌が佳いこともあってメロディが出て来て声がまたいい、すると、教師は微笑むんです。キャロルは声を出すことを一時止めます。教師が♪俺様の思い通りにあの子がなっている♪そう過信することを避けるためでしたが、キャロルは無駄な抵抗という結果を手にします。いい曲とは、我々のこころを雁字搦めにする何かを持っているのです。そして、今もこの中学が行っているのかはわかりませんが、当時、浜の町までバスに乗せて生徒達を引率、映画鑑賞させていたのです。社会見学の一環でしたがキャロルの近視では見えません。へばりついて観ようとしましたが、目を細めてやっと字幕が見える程度。エデンの東と千日のアンでした。それからキャロルはジェームズ・ディーンに憧れを抱くようになっていきます。ニッポンダンジのお醤油顔の類型ですが、アメリカ独特のねばりがあり、なんというニヒリズム、そして青春期の反抗の素晴らしさ・・・一歩間違えばすべては破滅するのにそこへ行き着く破滅主義の唐突さにキャロルは眼を覆いつつも惹かれます。アメリカ合衆国かあ・・・いつかは自分が制覇するぞ!!との意気に燃え立つのを禁じえないのです。アメリカという国で、この男優が若くしてすでに亡くなっていたことはショック以外の何者でもなかったですね。