ルビー・ウーマン《黎明編》〔48〕試験管ベイビーには、我々の伝言を伝えるという重大任務があるから、世界で、無二とも目される語彙力が問われてしかるべき。脇田大佐は手放しで歓喜びます。自分が生きている間、ついぞ、言えなかったあの言葉、この娘の口から、出てくるのではあるまいか?!!いいや、まだ、早計に走ってはならぬ、この国で渦を巻いている、おぞましい輩たちを一気に封じ込めなければ・・・。おぞましい輩たち?大佐はのけぞりそうになって追質します。おぞましいとは、神の視点から出た言葉だ。しかし、この人間社会では、それは、通常の衣として、ほぼ全員が、身にまとっていて常識の衣といわれるものだ。その常識の衣がぼろ雑巾に変わってしまうことを、彼らはまだ、知らずに、この衣を大事に身に纏っているのだ。この試験管ベイビーは、価値基準のすべてを崩壊させてしまう力を持っている。いわば、神の備品として唯一、地上に運ばれ、重宝されている。脇田大佐は、ドキドキしてきます。自分が言えなかったあの言葉、終戦しましょうではなく、この娘は、この娘の口から放たれる言葉は?神はこう言われました。自由を、この二文字を与えたことの試金石になるのだろう・・・と。