ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔2〕彼の妄想力には度肝を抜かされるし、それにまんまと架かってしまうキャロも、い・た・い・けなんです。しかしながら、好機が常に、二人の間を泳ぐのも事実なんですよ~あのユニクロを、黎明期のユニクロをものにしようと、動いていたのですから、そこは信じるに足る。そして、今も、世界を巻き込む地球規模の、好機が、チラチラし始めている。それに、彼は気が付いています。なぜなら、たくさんの顧客を見てきているからです。最も、貸すのを憂慮するのは、芸能人なんです。その盛栄の、確かさを見極めるバンカーは皆無。人気商売ゆえの弱さ。彼は、へそくりが無くなっている事に気が付くとすぐに、東京の出版社に、去年、三ヶ月業務停止になった販社の青山さんに連絡をとっています。ちょうどキャロが、福岡にアルバイトを探しに出掛けて留守の今年、一月末あたり。福岡に居ることを、すぐには伝えなかったんです。連絡聡明な宿七さんは、キャロが出版の為に、東京に向かったものと推定したんですね。へそくりは百万円ありました。なぜ?青山さんに?それは、キャロが担当編者の名前を明解にしていたから。会社名は、彼が郵便局に行って、四回にわたって郵送したから、これも公明正大。豊橋への百日間の、旅行を終えてすぐだったから、去年の六月の末ですね。キャロは、わ・ざ・と、今回は彼を巻き込んだのです。バンカーを目撃者に据えることに意義を見い出していたからです。これを、松本清張主義と呼んでも、過言ではないでしょう。