イエローダイヤ・マン《標榜編》〔578〕社員旅行に行く者たちと同じ行動を共に出来なかった僕は自己嫌悪に襲われる。しかもその積立金はそのままプールされて僕の社内預金に組み入れられて行く。そこを思えば実に有難いことなのに、すぐにも現金にして返して欲しい気持ちもどこかにあって、複雑だ。絶対服従ではないものの、社員旅行は行って損はないよ?と先輩にも釘を刺されていたにも関わらず、僕は独断の休日を獲ってしまった。どこにも行かずに家で悶悶と過ごしていたのだ。こんな僕は半年に一回くらいは絶対に出て来る症状で、こういう時には不思議に芸術分野が磨かれていくし、鋭敏になるのだ。遠くにいる友達は親友でもその距離分、毎日離れていくようなマイナーな感覚に陥るし、いいことは僕には起りはしないと懐疑的になってしまう。心を明るく保とうとするには一人は寂し過ぎる。結婚願望なのでは?と僕は自分に問い掛ける。こんな時こそがチャンスなのでは?と。人生を一生、一人で切り開くなんてキツ過ぎる。弱音かもしれない。普段の僕とは確かにかい離している構想だ。こんなちっぽけな僕を好む女性はいるのだろうか。世界中のどこかにいるのだろうか?僕はやはり社員旅行に行けば良かったと心底後悔したのだった。