サファイア・マン《緻密な男編》〔189〕苛烈な闘争心が全くといって生じないのが旅の客たちで従業員たちも、いちげんさんの扱いには慣れていてしかもクール対応を決め込んでいるかのようでした。しかし、そういったいちげんさんの中に強烈な個性の持ち主を見つけて、自分にピッタリだわ!!と大胆な発言をする女性もいて心がざわめいて来るんです。彼女たちは恋をしながら仕事をしている?って。いいえ、実質はその逆のはずでした。恋に見せかけて顧客を操り、その挙句、適度にあしらう?そのどっちなんだろうって。まだまだ若い彼女たちです。今思い出しても彼女たちの中で揉まれた経験がまるで芋を洗うボールのようにも見えて来ます。どうしてそんな初歩のマナーも知らないの?とまるで子供を扱うようにようちゃんは馬鹿にされ、叱責されていたと言えます。そんな状況下にある毎晩を送りつつ、それでも夢を保ちながら生き永らえるなんて神業でやがて、どうすれば生甲斐が生まれてくるのかを咄嗟に知った機会があって、それが自分の感性を共有出来る人々との出会いだったのです。四十歳を出た彼の感性は温厚で秩序を知っています。どんなことにも対応して今があるものの、人生で見落としたものがあった。それが詩歌だと本人が吐露しなくとも推量出来ました。