サファイア・マン《緻密な男編》〔187〕やがて、手堪えのある情報が入って来てそれからはとんとん拍子に物事が動き始める。まさか、旦那も思ってはいなかった本州への転勤。山口県は九州とは目と鼻の先とはいっても、そこは宇部市。私はなんでこんな場所へ??って訝るけれど、喜ばない妻は恐らくいない。私が妊娠の事実を誰にも話さなかったのも、この転勤騒動がクリアになってからっていう啓示が入っていたから。命の発祥さえ、男にとっては極々小さな出来事であって、それはそれまでの四年間で刷り込まれた夫への不信感。この不信感があったからこそ、誰にも言うまい!!まで発展。女性の勘は馬鹿には出来ない。宇部に転勤が決まって私がまだ、この大橋一丁目に拘り続けたのも正直な話で、宇部に行ってからの生活様式がまだとんと解らずにいたから。どんな毎日を送るのか?福岡生活よりもかなり田舎式になることは分かっていて、それに対する抽象的な不安感はどこかにあった。私はこの福岡を後にすることに、若干の迷いも持っていて、友達がせっかく出来たこと、そして同じマンションにも友達がいたことでも迷いは依然としてあった。転勤してその家でどんな生活に入るにしろ、妊婦としての不安も歴然としてあり、それは帝王切開をこっちの希望で執刀して貰えるのか?という一点だったのです。