サファイア・マン《かけがいのない男編》〔187〕主婦が家の中の仕事を完璧にこなして、鏡に映る自分に微笑みかけても、どこからも応答はありません。子供達がしっかり見える場所で育児や家事をしながら私は直感的に悟っていたのは、この子たちを最優先にしていたら必ず見落としが出てくる旨を了承していたのです。子供を立派に育てていくことは楽なことではありません。家事だって丁寧な心掛けで挑まないと、墓穴掘ることも分かってなお、私が個人の線引きにとことん拘っていたか?それさえ理解出来れば御の字です。文人にとって、家庭とはやすらぎでも何でもないのです。それを彼らに理解してもらう手間を省いて、私は常に物事を事後承諾型で進めていく習慣を付けていました。私の執筆時間をどこで取るかは、まだ、宇部に引っ越すまでは、はっきり決まっていた訳ではないものの、自然にそれはみずから出てくるものだろうと、神出鬼没な捉え方でいたのです。なぜなら私達の発想や構想はじっと何かを考えあぐねた揚句、出て来るものではなく、突発的に出て来るものがほとんど。一生懸命になったから出て来てくれた!!というものではない。瞬間こそが作家の本領というべきで、自然に湧いてくるものだから任せたのです。私の構想は誰にも真似も出来ないもの。そこをはっきり認識出来ていたことは幸いだったのです。