サファイア・マン《かけがいのない男編》〔186〕伯母のことを従姉たちが相当嫌っていることが判明し、ようちゃんの心にも虹が架かります。しかもそんなに嫌われているにも関わらず、ようちゃんだけではなく、すべての甥っこや姪っこ、その子供達にも金銭的配分を惜しまないのです。この精神に皆が本当は感謝しなければならないのに、この世代こそが、矛盾に満ち溢れた世代だったのです。口が達者というか、長所は確かに認めますが、老年者の短所については、ずけずけと皆が言いたい放題だったと言えます。ようちゃんは伯母にお金を工面してもらう身でありながら、上から目線でいる自分を即座に客観的に見つめます。彼女はなぜ、成績もぱっとしなかったようちゃんを持ち上げて久しかったのでしょう。和田家のことをしたためてもらいたかったから?他にも従姉の中に文筆力に優れた者はいたはずで、特に満蒙開拓軍記者だった父親を持つ従男たち。きっと思う処は、はち切れる位にあったはずで、それなのに、なぜ、伯母がようちゃんに執筆を依頼したかは、父の性癖にあったのでは?と後年になってようちゃんは気が付く。父は言い出したらきかない懲り性の性格で、しかも物事の起承転結に凄い拘りを持つ人物。そこに輪を架けて周到なる勉強家だったのです。その父を親に持つ娘だから?それは嬉しい大抜擢だったのです。