サファイア・マン《かけがいのない男編》〔181〕私は借りうる限度額をほぼ満額まで行使して、それに輪を掛けて、質屋に負債をもっていたことで、この価値のある品に対する愛着も並み大抵のものではなく、しかし、負債を話して夫や伯母に工面してもらう時に、ネックになるものが質屋であることは直感でわかっていたのです。自分のへそくりとして将来まで持っておく希望は禁じえず、しかし、その分まで支払ってもらうことは無理かも?とそこを思うと一体何の為に宝石を収集したかが意味不明になってしまう処で、実に思案の果てまで追いやられていたのです。夫は質屋での借金は少なからず知っていて、それまでも何度か支払ってもらい、幾つかのグループに分けながら出し入れして久しかったんですが、それがカードローンと対になっていることを、彼は心の奥底でわかっていたと思うんです。しかし私は仔細を説明することを避けて、その場その場を繕っていたし、そうすることで、時間稼ぎなるものをしていた。今も振り返ると恐ろしくなるし、なぜ、宝石にここまで固執したのか、自分の性がいとおしくなるのです。女性にとって、成功の証明のような宝石の存在は、私の中で身分不相応の位置を占めていたんですね。伯母に初めて負債を話したのは浦上天主堂の前にある公園でした。