ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔236〕留美子は顧客を連れてゴルフを終えて同伴出勤してきます。ようちゃんはまだ、この頃、同伴出勤の意味さえ解りません。ただ、顧客が余りにも豪放ライラクでその点に魅力を禁じえないのです。この手の男性はそれまで見たことがない兵で、ようちゃんはまるで妖精のように振舞う留美子を又もやせん望の眼差しで見つめるのです。彼女はカウンターの中に立ってはいず、顧客の横に座って話しています。キラキラ光るラメのチャイナ服がきらびやかでようちゃんも近くに行って、その話へ割り込んで行きたいのに出来ないのです。指を銜えて見ているしかなかったのか、遠慮したかったのか自分でも覚えてはいないのですが、まるで、チーママのように横に座って話し込む彼女に、風雲児の風格を嗅ぎ取っていたのかもしれず、自分と同じ年なのにここまで大人びてしかも年配の彼の気持ちを百パーセント虜にしてしまう魅力に、実は恐れ入っていたのかもしれません。自分はこんな場所にいて、場違いの彼女の風雲児振りを傍目にしながら、これには特別なシーンが表向きだけではなく裏にも働いているのでは?とそう察したのです。彼女が駆け抜けた二十代と私が駆け抜けた二十代を、将来比較するときに格好の材料になるという示唆です。