サファイア・マン《かけがいのない男》〔166〕父は説教することを避けて世間話にまずは入るのです。容子さんにとってこの博多は鬼門にも相当ではないか?ってそれを言いたいお父さんじゃない?って。私からこの言い回しをされて父は困ったようにかしこまるのです。お父さんはそもそも大事な事を言わなかった、それはきちんと会社に報告するっていう旨を相手に確認しなかったでしょ?って。父はのらりくらりと話を逸らして、そうは言ってもねえ容子さん、男は一歩社会に出ると七人敵が居るという程サラリーマンの世界は厳しいものだよ、いずれにしてもこの届け出の判断は相手に任せて静観する位の大きな器で相手に寄り添える、それが本当の妻の姿ではないだろうか?お父さんが妻ならそうすればいいわ、でもこれは私個人の問題!!私が嫌悪感をこれ以上は受け付けなくなっている、だからお父さんが幾ら仲介に立っても無理なものは無理!!父は打つ手もなくなった棋士のように黙ったままでしたが、しつこく後半も粘るのです。今日僕がいる時にシゲルさんを家に入れて一回、二人でじっくり話してみないか?いいえ、それは無理、そんな生半可な気持ちなら彼を出してない。