サファイア・マン《かけがいのない男編》〔165〕いいとこのお坊っちゃんではなかった故に彼の感性は研ぎ澄まされ、なぜ、私が鬼の首を取ったかのように歓喜に至れなかったかはもうお分りでしょう?今まで出会った中のどのタイプにも属さない人間性にようちゃんは感動していたのです。しかも彼が獲った俊敏な対応に男の鑑を見るのです。この頃父は、福岡を目指していたのです。そういうドアチェーンで夫を追い出すことなど許されない!!と立腹して父はカモメに乗ったものの全然浮かんでは来ない対策。娘の頑固さやパッパラパーの度合はそんじょそこらにない装丁で、まずバーナーで焼き切れないものかを長崎のホームセンターに寄って尋ねてはいたのですが、専門家にしか出来ないと断られるのです。どうしたものだろう、この攻防は自分が予知した通り、博多は容子さんにとっては鬼門。それが当たってしまった現実が父の心を興奮させ大きな失望へと向かわせていたのです。しかし余り深く悩んで自分が倒れてしまうようなことになってはまずい。まずは快活を装い、このマンションの中に入れて貰うことが先決!!いつもなら書店回りの父の博多行脚は全く違う様相を帯びて来たのです。