サファイア・マン《面白い男編》〔135〕今辿ってみると父の年齢がちょうど65歳。人生の転換期だったのでしょう。53歳で肩たたきのように中学教諭を退職してすぐに選挙に出馬するなど、身内の誰もが反対でしたが、キャロルだけは暖かく見守ったのです。そういう奇特なところがキャロルにはあって、誰もが見放したような人物や故事を好むのです。そこにあるのは興味だけではありません。今で言う人民詩のようなもので端的に言えば、詩歌に入るかもしれません。なぜ人は人生で成功したい!!と強く懇願するか、その源をさぐることが大事で、特に桁外れの父の出世欲が何から生じていたのかとても気に掛かっていたのです。自分を良く見せたいのか?大人物だと誉められたいのか?そこが解せません。多くの本を読んできた読書欲が父に及ぼした影響もきっとあるはずで、書店回りが趣味だったことも今頃、類推を抱かせるのです。今でこそ、電子書籍の時代ですが当時そういったものはまだ入ってきていません。世界にもなかったでしょう。しかしそういった紙と電子の違いというよりは、決定的に違っていた部位はあって、情操教育の捉え方でした。優秀な者が主導する世界の終わりで、その翳りをキャロルは心のどこかで予感として抱いていたといえます。しかし父は成績優秀な者こそが世界を牽引する・・・とそこは譲りませんでした。