ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔190〕母によって言動のすべてを制圧されていた父を幼い頃から見てきた関係上、キャロルにとって、父の言葉にはそれぞれ深い情緒があることに気が付かされます。今で言う忖度ですが、そこまで妻に気を遣う夫をここまで生きてきて見た事もないですが、そういったいわば弾圧の中で不意に出た言葉にこそ真実は宿るのでは?とマギャク思考を開始するのです。つまり打ちひしがれた人々はもはや嘘が言えないというトリックです。父はそれほど、家の中で立場がありませんでした。そのことは誰が招いたことでもなく当の父が招いたことだっただけに考えさせられます。強いことを言えば妻は家を出て行く用意がある・・・そのことも前段ではあって、言動の方向性をさらに狭められていたのです。しかし弟が生まれ母も観念したかのようでした。自分はこの土地にだけは骨を埋めたくはないが、それも視野に入れなければならないという女の観念でしたが、キャロルにとっては有り難い効能で、自分の人生での冒険や活躍は弟の存在なくしては得られないことを直感します。どんなに退屈でもそこでじっと耐えて何かを見出す手法ではなくキャロルが選んだのは並行作業です。これをやりながらあれも同時に進めていく・・・きちんと整理された書棚ではないもののいずれ同じ書棚に組み込まれる同一のあらすじの存在。手堅い予感があったのです。