サファイア・マン《面白い男編》〔124〕結婚が新チャンスを生み出すし、そこで果敢な選択にあやかれることは幸せなことです。何もお金が充分にあれば幸せではなく本当の幸せとはずっと後になって明解になってくるもので、キャロルはこの出産のお蔭でやっとこさ、病室に来てくれたシゲルちゃんの行いを喜ぶ時間もなく・・・・こういった精査を迫られていた。彼は母のこしらえるおかずの少なさを嘆き食卓におけるさい配にいちゃもんを付けてきた。なんという大胆さであろう・・・と驚愕も束の間、自分の思う処が鮮明になっていく気持ちにようやくリードされるのです。彼のお手伝いさんをやっているような人生では到底道は開けないという結論です。自分は新分野を開拓し人生で計上しなければならず、その必至を目の当たりにして人生スケールを想定するのです。金銭的には彼の支配下にあるかもしれないが、それでもいいのだ・・・と許諾を入れます。彼のもらたす恩恵は古い体制を維持する為のもので、その変わりようのない古びた思想を自分が替えてやろうなどとは思わず、逆に野放しにしておいて大丈夫なことを発見するのです。十九歳で行員になり思想のすべてをここで練磨した彼は出来た人でした。そういう彼を是正しようなどという気持こそ、浅はかで的さえ射てはいなかったのです。