サファイア・マン《面白い男編》〔123〕どちらかというと母の気質よりも父の気質を引いた傾向が強いのか、いつも綺麗にしておかなければならない約束事など全く辞書にないのです。しかし母は違います。小さい時から鍛えられたその習性は恐らく天性のものと相まってさらに加速完成していて母のそういう性向を忌み嫌ってキャロルは自分軸を延ばしていった背景もあります。小学校二年とはいえ気が利く長女が母の手を引いて各買い物に適する店を案内したようでキャロルは帝王切開だけに気持ちを集中することが出来、入院してもそう心配になることはなかったのです。今度はシゲルちゃんは観て見ぬ振りは不利になる・・・。としっかり駒を進めていく所存にあったのです。前回の出産では一回も病室を訪れてきてはいないのです。しかし今回は彼の勤務先の百メートルと離れてはいない。なんという運命の回転軸でしょう。キャロルは今か今と彼が病院に現れるのを待ちます。社会保険に家族を入れてくれることも秒読みでしょう。いい返事を待つことがこんなに素晴らしい予兆とは・・・なんともいえない幸せに浸ります。男児は無事生まれ、顔立ちも母方の鹿児島系。しかも男の子です。しかし・・・病室に現われた彼は新生児を見て喜びも束の間、異な事をのたまい始めるのです。