ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔176〕元気でいることを知らせようと母に電話を掛ける決心をします。電話ボックスでそれを伝えるだけでも違う。そのままではどこまでも放浪のような気がしたのです。午前中それを伝えて自分の気持ちをどうにかしたい衝動に駆られたのです。まさお君とまた喧嘩してしまっていたこともあり、相手に対するうんざりする気持ちも限界まで来ていたのです。どこか子供のようなところがあって暴言に聞こえたのです。母に対する依存があったのかもしれないし、相手を安心させるというのは見せかけで、本当は自分の憤怒をわかってもらおうとしたのかもしれない。受話器の向こうで母は喜んでくれてはいるものの向こうの気持ちはわかります。今すぐ帰ってこれない?それ無理よ・・・お金もないし。いや、帰ってくることは出来る!!どうやって?そこにいるタクシーに今すぐ跳び乗るのよ!でも・・・相当に高い金額になるよ、無茶だよ。そんなことない、一応帰宅して冷静になるのよ、お父さんの心配も考えてあげて!!キャロルはその言葉に絶句するのです。あんなに差別発言をしていた父が憔悴しげっそりやつれている様子を聞く。母も泣くことを抑えながら指南している。キャロルはすぐさまタクシーに乗り込みます。誰よりも母の言葉を優先することにしたし、それはひとり娘としての急務だったのです。