サファイア・マン《面白い男編》〔115〕まずはピアノを買わなきゃ~とキャロルは電話を取ります。新聞のチラシでいいのが見つかったからです。そこはわざわざ来ていただくのもなんですからこちらから参りましょうか?と親切だったのですが自分で出向くことの大事さもあって、子供達も一緒にタクシーに乗って出掛けます。中古ピアノを飾ってありました。何十台もあるそのピアノの中からキャロルはアトラスのレッドを選びます。お代はそのときお金を出してくれるシゲルちゃんがいてこそ支払えた。彼もそれをすることで、キャロルの出産を労おうとしていたのかもしれません。ルビー色を彷彿とさせるそのピアノを選んでキャロルはことなきを得るのです。自分がどんなに実社会や実生活で、邪険にあたられようとも、このピアノだけは別で存在感は格別でした。キャロルは早良区でそのピアノと遭遇して自分の目利きで選んだことを意義あり!とします。今日が人生最良の日・・・だと。帰宅して籐の長椅子に横たわって、ことなきを得られたぞ!!そういう思いだったのです。二十三万円でした。アトラス製のピアノはそれまで、黒いピアノばかりを目にしていたキャロルには新鋭に映ったし、もしも次に彼が変わってくれることが反故になっていったとしても、全然構わないとするくらい頼もしい存在だったのです。