ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔168〕海を見つめながら自分は九州の突端にいて、その向こうには本州の始まりでもある下関に繋がっていることをおぼろげながら感じ、自分が生きてきた環境と劇場は替わっていても、すべて繋がる話にきていたのが印象深くて、オーナーは商売の話をあれだけエネルギッシュに語っていたのに・・・・夫婦お互いが目を見つめ合いながら、何もかもあっても、僕たちにないのが子宝なんですよ。そこでキャロルは息を呑みます。経営のジンクスについてです。出来れば子供が欲しい、なぜならそれは間違いもなく自分の後継者であるから・・。アタマが急に痛くなって、俄然母が恋しくなります。ねえ、おばさんの家に電話をかけてこない?もう少しあなたとここで話したいから!奥様に従いキャロルは店の固定電話でおばさんの家に電話をします。あと少し遅くなりますが心配はしないでください!って。おばさんはわかったけどなるべく早く帰ってね、とにかくみんなが心配してるから。キャロルは受話器を置いて、テーブルの方を見つめます。自分がそこで何を発見したかは法外なものだったのです。作曲家にとって、自分の曲が後継者だということです。このことはキャロルの人生を大幅に修正し、それからの生き方のバロメーターになるものだっただけに力点を置きたいのです。