サファイア・マン《緻密な男編》〔111〕相手の了解も付けないまま、子供を多くもうけることはこそ罪に近い暴挙だとシゲルちゃんは思ったかもしれないし、そこを、一緒に住むとはいえ、当時は中々訊けません。ただ、彼の心の奥底にあったのは子供を育てることにお金が大変な関与をするということで、だから出来れば親子三人が理想だったのでしょう。キャロルと知り合った時点で二十四年、バンカーとして勤務していますからその功績を汚すようなことは絶対に避けたいし、この結婚が自分のキャリアを下にすることはあっても上にすることはまずない!!と高を括っていた。このしたり顔はキャロルの心を逆撫でしました。お灸が必要だ!!と強い思いに駆られて、彼が自分と結婚してみんなに誉められるとすればどういう場面なのだろう・・・と煮詰めていきます。できちゃった婚は当時まだ認知されてない。授かり婚という言葉が出てきたのも随分あと。お腹の子供は大人のプライドや見栄によって迷惑な難儀を受けているぞ!?キャロルが自分の誕生日に授かった男子だ!!相当の力を有して生まれてくるはずだ・・・そこへの配慮が必要でした。伴侶にそれ以上を求めることは無愛想な隣人に卵を借りにいくくらい心もとない行為だったのです。