ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔167〕いよいよその夜がやってきます。関門海峡を望むレストランです。オーナーはハンサムでニッポン語でいう若旦那の様相・・・まるで映画のよう。若い日の浜田光夫さんみたいにカッコイイのです。そしていつも朝、着替えのためにロッカーで鏡を見ながら身だしなみを整えつつ自分の中の記憶としてこれだけは一生消えないというものがあって、それは、自分のブレーンにならないか?というような言葉で今も忘れない。そしてこのお食事のときにも両者だけの胸の内にあったのは事実です。ブレーンという外来語、当時そういった言葉はありません。しかし企業家としてキャロルの才能を見出した第一人物として挙げていいでしょう。短歌にはまだ目覚めていません。短歌以外、その頃多くは書き出してはいないものの作曲は、キャロルの中で台頭し先陣を切っていました。そしてこのスーパー業界。ここでキャロルはレジ嬢として不思議な求心力を持ってることを彼は発見していたのです。テーブルでは見たことのないようなディナーが並べられ、自分が育った環境がいかに低レベルだったかが・・・・どうして彼を選んだの?どれくらいの収入が?ええ、まだ、そういうのはないみたいです。キャロルはしどろもどろに答えます。そのすべてが新鮮に写ったのは富豪と貧乏人という対角線上の照らし合わせがそうさせたのかもって。