サファイア・マン《緻密な男編》〔108〕家具屋の名前は二神。いまでいうと神ってるのダブリュー。何だか嬉しくなります。そのシゲルちゃんはちょうど今日、胃癌の手術から五年目を迎えて無事その到達日の今朝、いつもより早く新聞を取りにいき部屋で読んでいます。昨夜、消防車警察車両が出てたそうで、キャロルはその時間帯寝てたんですが、深夜になって起きて家族に聞きます。一回寝ると、キャロルは三時間は熟睡で後から知るんですね。近い場所です。キャロルはシゲルちゃんの癌入院のことを今もはっきり覚えています。いつも携帯電話はかけない彼。ケチだから自分からかけることはない。それなのに、俺の人生シマエタ!!癌になってたぞ・・・ってかけてくるんです。彼は十一月になってすぐ癌の検診を初めて胃カメラでするんですがそれは三男が愛知に就職したからで、それまで、自分のことを振り返る余裕がなかったというのです。親は子供の為に身を粉にして踏ん張るという言葉通り、息子たち三人がひとり立ちしてやっと自分の体を配慮しようか?ってなって検診受けたらその翌日くらいにわかる。手術までが速かった。確かに長大医学部にも親類がドクターでいたんですが近い病院の方がより看病する側が楽ですものね。キャロルは手術室に向かうとき、エレベーター内でのシゲルちゃんの覚悟を決めた顔を忘れません。まな板のうえの鯉ってのはあの表情ですねん。