俺はキャロルと知り合う前になんと、キャロルのハトコと一緒に仕事をしている。俺は次長で、彼は俺の部下だった。そのとき、なぜ、そんな偶然が起こる?などとは思わない。キャロルと知り会うのはそれから六年も経ってからだった。こういうのをキャロルは符合として捉え、運命の法則として解き明かす。キャロルのハトコは俺よりも五歳下で、剣道六段を持っていた。そして特徴があって飯を食うときに必ず頂きます!!と発声し手を合わせる動作、背筋がピンとなった。俺にはそういう武道から来る礼節というものがない。和田家の祖母が縫ったというお宮参りの袴がこのハトコの家に、まだ大事に保管してあるという。和裁、武道、料理、躾、そして礼儀作法、化粧や身だしなみ、そういったものをなぜ、キャロルの母は堂々と素通りしたのだろう。女子に必要不可欠なそれらを俺は昭和の宝として懐かしく思い起こすのだ。