ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔152〕昭和一桁生まれのまさお君のお父様のように逸脱した才能を生で見る機会すら今は恐らくないでしょうしキャロルの当時、高校を出たばかりの初々しい出で立ちが懐かしくて今日も息子を長崎空港に送った帰り、横道歩道橋を見て懐かしさに襲われます。横道という海沿いを歩いた記憶があったからです。長崎日大高校時代、そして卒業したばかりのキャロルにはまだ、人生の総体が見えていません。才能があれば運があれば人生、明日にでも開けるそういった甘い匙加減でいたのは事実で、こうやって、還暦街道に入ったキャロルは今朝、あの大村の長崎空港への架け橋歩道をダンベルを両手に握り、短パンでウォーキングする老人を見てたまがったのです。文学を気取り回想に耽って自己満足している自分なのでは?っていう懐疑ですよね。眼が覚めました。人生九十年のボックスが幕開けしているのです。伯母も父も九十代を超えて生きた・・・その本当の意味について思いを馳せるのです。彼ら彼女達にあったのは大和民族としての自尊心と気概。このふたつがまさお君のお父様にもあってクラブ経営者何する者ぞ!?という大きな視野は開けていたのです。貧しさや苦しさを撥ね退けるものこそが芸術魂だったのです。