サファイア・マン《緻密な男編》〔90〕複雑至極な家庭構成を乗り切る為に母がしかとを強行したのならそれはすこぶる最良案だったし、例えば階下にいたのが父の姉、妹、そしてキャロルからは従弟になる男性。それに加えてもうひとり居た時代もあるからびっくりします。今の総合科学大学にタヤの孫が和田家から通っていた時代があるのです。キャロルは女たちの会話を始終耳にします。他愛のない事でいつも会話が弾んでいるのがオンナドモでキャロルは井戸端会議の恐ろしさをそこで染み入る程に経験するか?というとそうでもないのです。叔母は伯母とは違い芸術家で小さな論議の中に間違っても入りません。ガタガタ問答しているのはタヤを省いた、従弟や伯母で、張本人たちも最後が全く噛みあっていません。伯母の唯一の楽しみは自分の家からトントントンと下っていった場所にある尼子美容室。そこで髪結いをしてもらい一週間の癒しを得る時間こそが最高の命の洗濯。キャロルは伯母にはせっかくの才能ありながら一回も新聞にすら載ったことがない理由がほぼ飲み込めました。父やそして妹の美知には一角千金狙いがどこかにあったのです。一角とは新聞の一角を占めるという気概や希望で新聞掲載のこと。父も新聞投稿に精を出した一時期があったし、妹も投稿歌人として同位です。