ルビー・ウーマン《ジーニアース編》〔133〕愛されていることを他者の面前で確立することがこれほど美味なものなら、キャロルはそれに向って邁進することが人生の有意義にあたるのだと思いかけますが、母が次にどう出るかわかっていただけに慎重でした。母は授業中のキャロルの動向より何より、お昼寝をしている弟の方が気に掛かって、早く帰らざるを得ないという事情で、キャロルは人生について思いを巡らします。タヤにちょっとの間すら、任せられない彼女の強硬さです。この絶対に譲れない気持ちこそが時代が抱える病巣で、しかもこの病巣こそが、意外や意外、将来においてキャロルを強豪にしていくものだとはまだ気が付いてはいません。もしもキャロルならおばあちゃんに抱かせて、或いは留守番を頼んで、寝かし付けていてもそうするのに、母は違っていた。しかしそこもなんとなくキャロルは容認していたのです。どんな苦しい場面でも決して人を頼ることのない母の傲慢さは、或いは小さい時に犯したキャロルの問題から来ているかもしれないと気持ちを引き締めたからです。とにかく母は、弟を寝かしつけて、今しかないと、傘を持って走ってきた・・・そして他の人々とハナシを交わす時間すらなく嵐のように去るしかなかった・・・。この一幕がいずれ大きな思想の介在になることをまだ幼いキャロルは知らなかったのです。