ルビー・ウーマン《黎明編》〔130〕容子みたいにガサツでしかも無精者、俺はかつてこの国で見たことがありません。そうだな、確かに俺たちのこの会話にも会話に不可欠な鍵カッコなしだ、どういういきさつでそうなったのか?、俺もそれを前々から知りたかった。俺は知っています、鍵カッコをいちいち出すのが面倒だった、それに尽きる。そういう人間が果たしてこの世にいたとはな?しかも俺がびっくりしたのは静謐を読めなかったんです。は?あの二文字をか?とあるマンション広告で目にして容子はギョっとして戦く。読めないからだな?それで一応行き当たりばったりでいろいろ出してみてようやくその読みを突き止めた・・・それで?この前の爪切りの俺の俳句を勝手に添削したんですよ?ほおお、静謐を入れたんだな?はい、この俺の立場がありません。しかしどうかなあ、脇田大佐、お前のグランドーターは今やわが国におけるカルチャーカリスマ、チャリスの頂点に立っている女性なんだぞ?それでも俺は残念です。その俳句見せてもらおうじゃあないか。かしこまりました。ああ、それも気になってた、なんで過去形しかないんだ?それはそうですね、言ってみましょうか?ああ言ってみたまえ。かしこまります。やっぱりそぐわないな?ニッポン語彙のマリアナ(マリンの穴)海溝たる部分でしょうか。ドレドレ静謐を入れた問題の俳句を見てみようじゃあないか。かしこまりました。