サファイア・マン《かけがいのない男編》〔69〕結婚することで、玉の輿に乗れる場合、表面には現れない難儀もあるということにキャロルは敏感な方です。そういう難儀とは?恐らくみんなも知りたい処でしょう。シゲルちゃんは知り合った当初からすでに両親とは他界していましたから周囲からの軋轢は皆無です。彼はじゃあ、何に恐れを抱いていたのでしょうか。これから結婚する人々にもきっと練習帳みたいなスキルアップにもなるかもなあって、若いとはいえ、七月には三十代に突入ということで、キャロに一抹の不安や焦りが生じていたこと、そして何より、恐らく人生では最大の恋愛だったと言い切れる彼氏の逃亡があった・・・そのことが男性恐怖症に陥らせていて、もうカッコいい男はこりごりっていう処のケッペキが自身の中に構築されたことも要因になっていた。シゲルちゃんがカッコいいという人はいないし、誰がみてもマジメなバンカーで、その仕事においては非の打ち所がなかった。それなのにどこに見間違いがあったのか?というと優柔不断なのです。まあ、性格的にいえば悩み過ぎるという一点で、それは見ようによっては長所なのです。石橋を叩いても今日はその橋を渡らない。そういう諺を作ってもいいくらいに実際に存在するのです。