サファイア・マン《緻密な男編》〔54〕キャロルの人生開花が遅いのは言えますが六歳下の弟の快進撃が待たれます。キャロルはどんな思いで今か今かと病院の待合室で本を読みながら待っていたか・・・。看護婦さんも一緒でした。その看護婦さんがキャロルの本読みを誉めてくれたんですね。もうすぐ生まれるからあと一回読んで!!って。キャロルは心配でたまらなかったのです。母は生まれた子供を連れて和田家を出ようという計画を一時持っていたからです。そういう不安定なこころの様相をいい方にひっくり返してくれるのでは?それくらいの出産だったし、案の定、生み終えて見る母の表情は明るかった。貴女を生んだときの苦しみの十分の一で済んだって言うのです。母はこの妊娠期間中にタバコを覚えていたのです。なんともいえない精神安定剤の役割をタバコは果たし、こころを落ち着かせるという煙の効能に幼いキャロルは惹きつけられます。大人になったら自分もこれを拠り所とするのだろうか。実は父も吸っていたのです。ゴールデンバットやしんせいですが懐かしい名称です。父は安いタバコを大絶賛していたし、庶民のどこにもある家庭の原風景でした。母はキャロルにこう尋ねたことがあったのです。