オレガイは予稿もなく予行演習もなくこうして始まる。みんながついてけない!?と思う程、俺には迷宮はなく、俺は至って単純なニンゲン。みんなが企業戦士のように思っていたらばマチガイだ。俺は会社を定年してもう随分と隠居生活。こうしてみんなと一席設けてくれたキャロルには感謝するのみだ。何しろ俺には親友がいない。ひとりだけだが親友だった、唯一の彼のことを思い出す。どうしているのか?と。鈴木君というその彼はずっと独身だった。思えば彼だけを俺の故郷の富士町に招待する。彼は喜んでついて来た。まだふたりとも行員歴は浅くて若かった。彼のような人物はそういないだろう。純粋なのだ。物事の捉え方すべてがそうだった。俺はちゃきちゃきの江戸っ子のような自分のかまびすしさとは相反する彼の大人しさを愛した。自分の故郷を彼に見せたいな?とそう思うまでに彼とは打ち解けていたし、転勤があるお互い、いつか別れ別れになっていった。俺は家庭を持たなかった彼の人生もそれなりに素晴らしいとそう思うし、結婚しないというとまるで落ち度があるかのように捉える人間を俺は逆に信用しない。結婚したからと、それで人生のすべてが見えるわけではないのだ。