サファイア・マン《面白い男編》〔52〕例えばホステス全員が固定的概念を持っていたのは言える。海外ブランドや国内ブランドスーツ。それを着て靴もベルトも決めてやる。そういった鼻息がキャロルには馬鹿に見えていた。それはなぜかなあって、社交場であるクラブをみんなは男女の出会いとか、会社接待の厳粛な場面と捉えていたからこそで、キャロルは音楽的に捉えていた、そこでの差異はありましたね。みんなは確かにサックスの音色やら、音楽の素晴らしい臨場感にそのときは酔っていますが、一瞬でそれは終わる。しかし・・・キャロルの場合、テイクファイブやジエンドオブザワールドなんかが終わっても、すぐさま、次の場面へのクロスがなく、暫く楽曲に陶酔したりと全然動作が彼女たちとは違うんです。速くてスリリングなジャズ名曲ともっちりしたチークダンスダンス曲の王者である後者。人生の捉え方そのものが違っていて、自分はどっちなんだろう・・・と。彼女たちは生活基盤がしっかりしていて服装にもお金を投資出来ましたが、あゆみにはそれが出来ません。安い出費でこのワンピースを買い、ベルトを赤にそれも細いビニール製に、しかも足元をつっかけにするんです。なんでサンダルにしかも踵を止めないつっかけにしたかはわかりません。ただ単にその踵のヒールの高さと銀色に魅せられたとしか。