ルビー・ウーマン《ロイヤル・ボックス編》〔107〕題名不詳なのに歌詞だけがこれだけ立ち上がってくる歌も珍しいし、小さい時から母がキャロルに歌わせていたというのは大きかったでしょう。母は教師の教則本として童謡集を持っていてその中にあったと記憶する。分厚い教則本から母は自分が好みしかも弾き易かったことが起因したのでしょう。キャロルはしかし歌詞を読んですぐさま、あまりに寂しい雀の気持ちに感情移入してしまうのです。この小雀と少女こそが自分と母なのでは?長い長い間、世の中から封印されてしまう母と娘?って。しかしながら曲想はダイナミックで決して悲しいとは言えなくキャロルは思い直します。戦争はあったとしても自分たちは、昭和も四十六年を経過した地点にいる。戦争の関連はないにも等しいのになぜ>母性本能を駆使してまで母は慎重になるの?一体これから何が起こるというの?十五歳のキャロルは母の憂鬱はそれこそ杞憂なのだと譲りません。母が自分の父親を封印したこともそれ程深くは、深刻にはキャロルは捉えてはいません。自分は作詞作曲をして世間を優雅チックにもっていく、そんなシンガーソングライターへとこころはウキウキだったのです。しかし母はこの教則本を突きつけて一緒に歌いましょうよ?とやたらしつこいのです。